~~家を建てることには大きな責任が伴う~~
仮に地震で自宅が倒壊した場合、「自分や家族だけの問題」と捉えず、地域にも迷惑をかけてしまうことを、まず認識して下さい。能登半島地震では、倒壊した多くの建物が道路を塞いでしまい、救急車や消防車が通れず救助に遅れが生じました。当然、倒壊した建物を誰かが片付けなければいけない手間も発生するほか、倒壊によって電気配線がショートすれば火災発生の原因となり、隣に建つ無被害の家まで巻き込んでしまう可能性もあるのです。
実際に能登半島地震において、輪島市で発生した大規模な火災は焼損棟数約240棟に及び、その原因については未だ調査継続中ではあるものの、総務省消防庁消防研究センターによれば「火元と思われる建物の調査において屋内電気配線に溶けた痕跡が認められること等から、屋内電気配線が地震の影響で傷つくなどして発生した電気に起因した火災の可能性が考えられる」と明記されています。怖い話ですが、もしかしたら死者の中には倒壊した建物に閉じ込められ、救助の遅れによって生きたまま火災に巻き込まれた人もいたかもしれません。このように地震大国である日本において、少しでも被害を減らすべく地震に強い家を建てることは、最低限の責務であると言っても過言ではないでしょう。


~~改めて令和6年能登半島地震を振り返る~~
また、能登半島地震は被災した地域が広範囲だったことも特徴の一つです。例えば2016年の熊本地震の被害は益城町に集中していましたが、能登半島地震はその名の通り能登半島の全域に及んでいます。そして前述したように過疎化が進んだお年寄りの多い地域で「旧耐震基準」の古い建物ばかりだったことが、余計に被害を拡大させる結果となりました。
以前にも地震は発生していましたから、頭のどこかで「このままでは危ない」といった意識もあったかもしれません。しかし、建て替えや耐震改修には相応のお金が必要になるため「お年寄りは若い人たちに比べてモチベーションが上がりにくく、“何も起きないかもしれない”との考えもあって、その一歩を踏み出せないでいたのではないか」と、能登半島地震後に実際に現地調査を行った構造塾の佐藤氏は分析しています。ただ、繰り返しになりますが、耐震性を高めることは人の「命」に関わります。本気で危機感があるのなら、お金の問題もありますが、やはり「災害に巻き込まれてからでは遅い」のです。
地震によって2階の重さに耐えきれず1階部分が圧し潰された写真を見ても分かるように、圧死した人の多くは1階にいました。既存の建物の耐震改修を行う場合、平屋ならともかく、2階建ての場合は重視すべきは1階部分、それも2階の真下を補強することです。「では、実際にどうやって補強するのか」については専門的な話になるため、ここでは割愛しますが、とにかく大事なのは、仮に倒壊した場合でも「生存空間」をつくれるようにすること。食器棚など大きな家具を均等に配置しておくのも有効な手段です。まずは「死なない」こと、これが一番で、生きてさえいれば救助を待つことができるのです。

